@ はじめに
近年、うつ病患者数は年々増加傾向にある。特に、20〜30代の若い年齢層の患者が多く見られる。その原因として、一つに不景気により社会全体に余裕がなくなってきていることがあげられる。
それは大人だけでなく、子どもの社会にも言えるようだ。問題行動が表面に現れる子供の数も増加傾向にある。一般人口における子どものうつ病有病率は児童期で0.5~2.5%、思春期では2.0~8.0%にも上る。
今回視聴したビデオの中では子どもについてはあまりふれていなかったが、興味があったので子どものうつ病について視点を当ててレポートを検索し、考察した。
A 選んだキーワードについて
私は「うつ病」、「リラクゼーション」という二つを選んだ。うつ病という病気をケアする方向から見たかったからだ。
B 選んだ論文の内容の概略
キーワードに関連する二つの論文、「子どものうつ病の診断と治療」、「小児プライマリ・ケアにおける不定愁訴と子どもの心の問題」について読み、まとめる。
「子どものうつ病の診断と治療」については、まず子どものうつ病について知っておきたかったために選び、それをふまえて「小児プライマリ・ケアにおける不定愁訴と子どもの心の問題」も考察していきたい。
まず、「子どものうつ病の診断と治療」の内容の概略について記す。
子どものうつ病の一般的事項として、性差は児童期ではほとんどないが年齢が高くなるにつれ女性の割合が多くなり次第に大人と同じ性差(男女比1:2)が見られるようになっていくと考えられている。成因は明らかにはされていないが生物的要因、心理的要因、社会的要因が複雑に関連していると考えられている。うつ病は「大うつ病性障害」、「気分変調性障害」、「重複うつ病」、「反復性うつ病」、「双極I型障害」、「双極II型障害」に分類されるが大きく「うつ病性障害(うつ病)」、「双極性障害(躁うつ病)」に分けられる。子どものうつ病の予後は発症後1~2年で多くは寛解するが、その後再発する症例が多く軽症まで含めると大人になって60~75%がうつ病を再発するという報告がある。うつ病の症状としてアメリカ精神医学会の大うつ病性障害の診断基準によると@ 抑うつ気分、A 興味、喜びの減退、B 食欲障害、C 睡眠障害、D 焦燥感あるいは行動抑止、E 易疲労感、気力減退、F 無価値感、罪責感、G 集中困難、決断困難、H自殺観念の9項目が挙げられている。このうち5項目以上が2週間以上持続し、社会的機能の障害を引き起こしている場合にうつ病と診断することができるが、症状のうち少なくとも一つは@ 抑うつ気分、またはA 興味、喜びの減退であることが必要である。子どものうつ病の症状も、基本的には成人のうつ病と同じ症状が出現する。大人と比較すると、社会的引きこもり(不登校など)、身体愁訴(頭痛、腹痛など)、イライラ感などが特徴的である。うつ病の症状は、最も基本的で、みなに共通する症状(中核症状)と、個人の人間性(性格、年齢、国民性など)を介してあらわれる二次症状に分類できる。中核症状とは、身体症状として、睡眠障害(中途覚醒、早朝覚醒)、食欲障害(食欲低下、体重減少)、日内変動(朝の調子が悪い)、身体のだるさがあり、精神症状として興味・関心の減退(好きなことが楽しめない)、気力減退(何事も億劫)、集中力の低下(本や漫画が読めない)からなる。一方二次症状とは、中核症状の体験が各個人により加工されたもので、不安、抑うつ気分、焦燥感、悲哀感、などの感情や、自傷、自殺、ひきこもりなどの行動が含まれる。子どもの場合、同じ鬱状態に陥っても、表面に現れる症状は異なっていることが多いが、いずれの場合も中核症状は共通して存在することがほとんどなのである。前景に見える症状だけでなく、その裏に潜む中核症状の存在に注意することがうつ病を発見する上で重要である。治療については@ 心理教育的アプローチ、A 十分な休養、B 薬物療法、C 精神療法、D 家族へのアプローチという面からわけてみていける。@ 心理教育的アプローチでは、子どもおよび家族に病気の説明および治療方針についてわかりやすく説明し、家族へも、協力が必要不可欠であることを十分に理解してもらう。(D 家族へのアプローチ)A 十分な休養の指導で、うつ病は身体の疲弊状態と考えられるので休養なしにはどんな治療も成功しないことを説明し十分に休むことの必要性を強調する。うつ病の治療において基本であるB 薬物療法は対症療法的に使われるのではなく、根治療法に近い意味を持って使用する。C 精神療法では大人の場合より重要な意味を持つので子どもの話に耳を傾け、真の感情や考えを言葉で表現できるように援助し、発祥の契機となった出来事についてともに検討していく。
次に「小児プライマリ・ケアにおける不定愁訴と子どもの心の問題」の内容の概略を記す。
子どもの心の問題について、問題行動が表面に現れる子どもの増加を受け年々関心は高まりつつあるが、専門的に携わることのできる医師の数が少ないため、医療的ケアを実践する場は限られている。不定愁訴など、こころの問題による身体症状、精神症状のために最初に受診するのは小児科が主体であるため、プライマリ・ケアによりいかに気付くことができるかが重要な位置を占める。子どもを取り巻く社会環境が変化している現代において、外見上心身共に健康そうにみえる子供たちは多いが、アンケート調査の結果によると小学六年生のうち72.5%が眠れないことがよく、ないし時々あると答え、園に通う子どもにも、不規則な生活を送っている様子のこどもが3〜5年で急に増えていて生活が夜型になってきていることがわかる。また、小学1年生から中学三年生20,486名を対象とした抑うつ状態に関する調査では、抑うつ群は全体の13%(小学生7.8%、中学生22.8%)にのぼり、男子は中学一年から、女子は小学六年から増え始めている。症状としては楽しみの減退や身体症状が上位を占めている。これらの背景には、遊び体験の欠損(自主性、社会性、耐性、道徳性、創造性の未発達)、社会の夜型化(短眠化)、両者の「負の連鎖」が存在し、最近では子供たちとメディアが接する機会の加速度的な増加が心身の疲労を生み出し、コミュニケーション不足をもたらし、この「負の連鎖」を助長していると言える。人と人とのコミュニケーションを展開することの重要性は認識されているが、コミュニケーションスキルを育む環境は急速にむしばまれており、これを止めるためには多人数、他職種によるネットワークの構築とネットワークケアの実践が不可欠である。小児プライマリ・ケアの現場では子どものこころの問題への対応能力の拡充や、保護者の成長を支援することによる親子関係不全の解消への取り組みが行われている。園や学校保健の現場の視点から見ると、〈個性〉か〈障害〉か、個人の〈特性〉か〈二次的な問題〉かの不明瞭な境界に悩むことが増えていくと推測される。家庭や園、学校で子どもたちのからだとこころのバランスを維持するために何が求められているのかを把握することと、成長と発達の過程(成育過程)に沿いながら確定診断に努めることを適度な比重で進めていくことが重要でありそのアプローチにも懐深い姿勢が求められる。このためのネットワーク構築には地域ごとの情報網の整備とマンパワーの確保が不可欠であり初期対応に参加できる医師を一人でも増やす試みの意義が大きくなる。小児プライマリ・ケアを行うためには、家族の手助けが必要となってくることは先にも述べたが、その保護者の中には子どものことで悩み、疲れ切った親も多く、養育態度の問題などが見え隠れしていてもすぐには切り込まないほうがよい。行動の問題を持つ子供の保護者には、子どもの長所に目を向けさせて子どもと保護者の関係を修復するように求める。子育て支援により多くの保護者の「育児負担」を量的に軽減することが可能となってきているにもかかわらず、親子関係不全と評価される場面は依然として多く指摘されている。この問題を解消するために、保護者が保護者として成長していく過程を@子どもについての理解を深める A園の保育などの理解を深める B保護者が周囲の人々とふれ合い自分自身について考えることを基本方針としてささえるこころみが行われている。親子関係がどのように変容するかについての過程を再認識することは実効性の高い子育て支援を維持するうえで重要である。
C 選んだ論文についての考察とまとめ
本来大人の病気であるはずのうつ病が、いまや大人だけの問題ではなくってきていることが感じられた。子どものうつ病の場合もある程度基本症状はわかっているが、大人と違いそれが単にその子どもの性格なのか、それともうつ状態にあるのか、うつになりそうなのかがわかりにくい。たとえば不登校という問題からみてみるとする。それはたださぼりたいだけなのか、それとも本当に登校したくないのかの判断を適当にしてしまい、すべてを「しんどいなら、行かなくてもいいのよ。」あるいは「学校に行くのが子どもの義務」としてしまうといずれにしても子どもにとってはよくない影響を及ぼす。子どもは周りの大人から影響を受けやすい立場にいるために、文中にもあったがやはり周りの大人がどれだけこどもを見ているかが重要であるということがわかった。
また、論文によると子どものうつ病について、予後はよいが再発しやすいとあり大人のうつ病患者を減らすためにはまず、子どものケアから見直す必要があるようだ。しかし、ケアするといっても専門的な知識を持つ医師が少なく、重症の場合では成人同様に憂うつな表情で口数も少なくみるからに元気がないといった様子が見られるが、多くは軽症で、少し見たところでは元気がない、程度にしか見えないことが多いとなるとケアするどころか気づくのも困難であるように思う。専門的な知識は確かに必要だが、まずは周りの人々が気づき、ケアしようという姿勢をしめすことで子どもの心の負担は軽減するのではないだろうか。現在の社会は人々が密に接する機会が減ったと言われているのなら、そのぶんいちばん身近な存在である家族でフォローしていくしかないにもかかわらず、その保護者自身も自分のことだけで精一杯になっているのではいっこうに現状を打破できない。
医師が子どものうつ病に対しすべきこと、それはまず子供たちの生活する環境を整えてやらなくてはいけないと思う。子どもだけを治療してもうつ病とは周りの環境にも大きく左右され、原因を改善しないと何回でも再発してしまうだろう。それをやろうとすると医師は一人の患者にとても時間をかけることになる。そうなると医師の手が足りない。
いま、人気のある科に医師が集中し、人気のない科には足りないという事態が起こっているらしい。それは地域にも見られ、都会にはたくさんいるが僻地は医師不足であるようだ。どこにどのような医師が必要とされているかを広い視野で見て、必要とされたときに十分に動けるくらいの知識と経験を持ち合わせた医師になりたいと思った。